前後際断

こんにちは!匠ゼミナールの南です。2018年も残すところあとわずかになりました。

秋の日はつるべ落としと言いますが、陽が落ちるのがめっきり早くなりましたね。街を見渡すとそこかしこでクリスマスの準備が着々と進んでいるようです。

今日は禅の言葉から「前後際断」というものを取り上げてみました。禅の言葉では前際とは過去のこと、そして後際とは未来のことを指します。曹洞宗の道元禅師や臨済宗の沢庵和尚は自身の遺した書物の中で次のような内容を述べています。

前際と後際は断ち切れているものです。そのため現在の状況を、過去や現在と対比するあり方を否定しています。つまりあらゆる存在が、時間性によって規定されていないことを示しているのだそうです。

難しいのでもう少しわかりやすく言いますと、人は過去にとらわれ、後悔したり、あきらめたり、悲観したりして、今を過ごすものです。一方で、まだ起こらぬ先の未来を不安に思ったり、逆に、都合のいいことが起こるのかと妄想したりして、今を過ごすものです。しかし、それは過去・未来にとらわれてしまって、今をしっかり生きていない状態だというのです。前(過去)にも後(未来)にもとらわれず、今この瞬間を、精一杯生きるというのが、「前後際断」の持つ意味なのです。

受験生には特によく伝えることですが、入試というのは本当に1日1日の積み重ねであり、入試当日だけ頑張ればよいということではありません。受験が近づくにつれてどうしてもいろいろなことが頭をよぎり、勉強に集中しきれない日があることもあるでしょう。しかし、それはまさに過去にとらわれたり、先の未来を不安に思うことで、その日を全力で過ごせていないということでしょう。

これは受験生ではないみなさんにも大事な話です。例えば定期テストで良い点を取り目標を達成したとしましょう。そのテストに向けて日々頑張り続けたことでしょうし、そのことはとても素晴らしいことです。しかし、人というものはひとつ目標を達成するとどうしても満足してしまい、油断もしてしまいます。しかし、そうなってしまってはあとは下降線を描くだけ、どんどん悪くなってしまいます。上がるのは大変ですが、落ちるのはあっという間なのです。

そうならないためには、終わったことも先のことも断ち切り、まっさらな気持ちで目の前の勉強に臨むことが求められます。「いま」に集中することがなにより大切なのです。自分はこうなりたい、自分はこれがしたい、そういった強い目的意識が自らを高める意欲の源となり、そしてその意欲が「いま」への集中力を引き出してくれるのです。